【免疫】梅毒の検査~検査法や偽陽性の原因・臨床的意義を押さえよう~

この記事では梅毒検査について解説します。B型肝炎の検査とともに臨床検査技師国家試験では頻出の問題なので整理しておきましょう。

B型肝炎についてはこちらの記事で解説しております。

■目次

梅毒検査で検出しているものの違いを押さえよう

梅毒検査法の種類について

感染からの時間経過と偽陽性、先天性梅毒

一枚にまとめると

■梅毒検査で検出しているものの違いを押さえよう

梅毒の検査についてはまず検出しているものの違いを押さえる必要があります。梅毒(トレポネーマ:TP)に感染すると2種類の抗体が産生されます。それはカルジオリピン(CL)に対する抗体(抗CL抗体)とTPに対する抗体(抗TP抗体)です。カルジオリピンはリン脂質の一種であり、梅毒感染以外でも出現します。すなわち抗CL抗体は梅毒感染に特異的ではありません。後述しますがこれが抗CL抗体を対象としている検査で生物学的偽陽性が生じる理由です。

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■梅毒検査の種類について

梅毒の検査法は医歯薬出版の赤本に非常に詳細に書かれています。プロトコルまで書かれていますがそこまで覚える必要はありません。まず初めに抗TP抗体を対象としている検査はTPPA, TPHA, TPLAなどTPがつきます。大まかな原理だけここで説明します。TP〇AのAはagglutination(凝集)の意味です。抗TP抗体が含まれる患者血清にTP抗原を添加すると抗原抗体反応により凝集が生じます。凝集の程度から血清中の抗TP抗体を定量するという原理です。TP〇Aの〇の部分は抗原を何に吸着させているかの違いです。ゼラチン粒子ならparticle(粒子)でTPPA, ラテックス粒子ならlatexでTPLA, 赤血球ならhematocyte(血球)でTPHAとなります。

抗TP抗体を対象とした測定法は凝集を利用する方法以外も存在します。それがCLEIA(化学発光酵素免疫測定法)、イムノクロマトグラフィ法、FTA-ABSです。CLEIAについては別の記事で詳細を解説します。FTA-ABSはIgM型抗体の確認検査として用いられます。原理としてはTPに結合した抗TP抗体(ヒトグロブリン)に、蛍光標識した抗ヒトグロブリン抗体を結合させ、蛍光顕微鏡で蛍光を確認します。感度が高い検査です。

次に抗CL抗体を対象に測定している検査にはRPRカードテスト(STS法)があります。これも原理としては抗原抗体反応による凝集を利用した検査です。試薬にカルジオリピンが添加されており、血清中の抗CL抗体と抗原抗体複合体を形成すると凝集して定量できるようになります。

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■感染からの時間経過と偽陽性、先天性梅毒

国家試験でよく問われるのは感染初期に有用であるか、治癒後に低下するか、生物学的偽陽性があるかの3点です。

感染初期の有用性についは、抗TP抗体は感染してもすぐには上がらないので有用ではありません。一方で抗CL抗体は感染ごく初期は陽性になりませんが、感染初期に上昇するため有用です。イメージとしてはより特異的な抗体と産生するのには時間がかかるといった感じで覚えるとよいでしょう。

治癒後は抗TP抗体は治癒しても高値を示すため、治療の指標にはなりません。抗CL抗体も治癒後すぐに低下するわけではありませんが、高値の状態が続くわけではないです。

生物学的偽陽性についてはすでに述べた通り、抗TP抗体はTP感染に特異的なのでありません。しかし抗CL抗体は自己免疫疾患、ウイルス感染、Weil病、抗リン脂質抗体症候群、担癌、妊娠などで偽陽性となります。

病態の把握には抗CL抗体を対象とするSTS法が有用ですが、STS法には生物学的偽陽性という欠点があります。一方で抗TP抗体を対象とした検査には生物学的偽陽性がないのでSTS法の欠点を補うことができます。

先天性梅毒の基準についても問われることがあるので以下の条件を覚えておきましょう。

  • 児のSTSが母体の4倍
  • 児のFTA-ABSが陽性
  • 児のSTSが6か月を超えても陽性

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■一枚にまとめると

梅毒に関しては以下の内容を覚えておきましょう




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