【臨床化学】心筋梗塞のマーカー~順番を押さえて確実に得点しよう!~

この記事では心筋梗塞のマーカーについて解説します

心筋梗塞は臨床においても重要な疾患と捉えられており、国家試験でも問われることが多いです。
心筋梗塞が起こると血中でさまざまな物質の濃度が変動します。心筋梗塞発生からの時間的な流れをあわせて覚えることが重要です。心筋梗塞についてはST上昇など心電図所見も非常に頻出なので合わせて確認が必要です。

■目次

心筋梗塞のマーカーの種類と出現する順番

各マーカーの特徴や特記事項

一枚にまとめると

■心筋梗塞のマーカーの種類

心筋梗塞のマーカーとしてはH-FABP(心臓型脂肪酸結合タンパク)、ミオグロビン、トロポニンT、CK-MB、心筋ミオシン軽鎖、LD1型を押さえておきましょう。

出現する順番としては上記に紹介した順番です。具体的な時間との関係を示すとこのようになります。これらのマーカーは心筋細胞のどこ由来かで分類することができ、これが出現するタイミングにも関わっています。H-FABP、ミオグロビンCKは細胞質可溶性物質に分類されていて血中への出現が早いものになります。これに対してトロポニンT、ミオシン軽鎖は筋原線維構造タンパクであり、出現は比較的遅いとされています。


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■各マーカーの特徴や特記事項

H-FABPについては教科書にも詳細な記載がない上に、過去問や模試でもH-FABPの特徴を問われたことはないので一番最初に出現することだけ覚えておけばよいでしょう。出現が早い理由としては低分子量なタンパク質であることが挙げられます。心筋細胞の細胞質に存在するタンパク質で心筋が障害を受けると逸脱し血中濃度が上昇します。

ミオグロビンも特別に覚えておくことはありません。ミオグロビンに関しては血液検査学の分野で貯蔵鉄としての役割があります。このことからもわかるように、ミオグロビンは心筋などの筋肉中でヘモグロビンのように酸素の運搬・貯蔵に関与するタンパク質です。

トロポニンTは排泄が腎臓であることを覚えておきましょう。また心筋梗塞だけでなく心筋炎や不安定狭心症(心筋梗塞の前の段階)でも上昇します。

CK-MBはCK(クレアチニンキナーゼ)のアイソザイムです。CKに関する問題はよく問われるので暗記が必要な事項ですが、ここではCK-MBについてのみ紹介します。まず出現のタイミングですが発症後4時間以降とされています。CK-MBについては測定法も確認しておきましょう。CKにはCK-BB(脳:brainに存在するCK)、CK-MB(心筋に存在するCK)、CK-MM(骨格筋に存在するCK)の3種類があります。脳には血液脳関門(BBB)がありCK-BBが大循環に存在することはないと考えられています。つまり血中にはCK-MMとCK-MBが存在するのですが、このうちCK-MBの活性だけを測定しなくてはいけません。そこでCK-Mに抗CK-M抗体を結合させることで失活させます。この条件で酵素活性を測定するとCK-MMの酵素活性は測定されず、CK-MBのうちのCK-Bの活性のみが測定されます。CK-MBのはCK-MとCK-Bの2量体なので測定されたCK-B活性を2倍するとCK-MBの活性だけが測定できるのです。

心筋ミオシン軽鎖についてですが、こちらは詳細に問われることはないと考えてよさそうです。ミオシンとは筋肉の収縮に関わるタンパク質で、アクチンとミオシンの動的な関連によって筋収縮が起こります。よってミオシンは心筋に豊富に含まれるタンパクであることを把握できていれば問題ないでしょう。発症後24時間で上昇し1週間程度高値の状態が継続します。

LDは逸脱酵素としてよく測定されます。詳細は別の記事に掲載しますが、ここでは心筋梗塞と関連する情報のみ記します。LDには5つのアイソザイムがあり、そのうちLD1は心筋と赤血球に局在します。LD1は赤血球にも含まれるのでLD1の上昇は溶血性疾患との鑑別が必要となりますが、溶血性疾患の場合はLD1以外にLD2なども上昇します。全身の細胞に局在し心筋梗塞で上昇するASTと合わせたLD/AST比によって区別することができます。具体的には心筋梗塞ではLD/ASTは5程度ですが、溶血性疾患では15を超えるとされています。LD1は発症後24-60時間で上昇してきます。

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■一枚にまとめると

各マーカーの特徴よりかは出現する順序が非常によく問われます。問題の傾向が変わると特徴についても問われる可能性がありますが、いち早く得点を上げたい方は時間的流れだけはマスターしておきましょう。



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